君も見ただろう
正義のヒーローの断末魔
切り裂き
ビルの屋上から吊るされた全身タイツの男を
奴らは秩序フェチを好んで手にかける
漆黒のナイフが人の血をすする度に
奴らはより強く より速くなる
今日もまた被害者が出た
今度は女性だ
両耳が中耳まで抉り取られていた
無神論者の僕たちは
銃がなければ奴らとは戦えない
弾丸が尽きたら白バイに飛び乗り
任務も放棄して逃げ帰るだけ
夜になって
奴らの一人の死体が運ばれてきた
まだ幼い 髪の長い少年だった
彼一人を仕留めるのに
百四十人余りの警察官が犠牲になったという
激しい銃撃戦の末 右腕は爆風で切断され
顔面は蜂の巣で人相も分からない
魔氷人の肉体の貴重なサンプルが手に入り
解剖班の人々はメスを片手に小躍りしている
解剖の結果
彼は生物的には僕たちと全く変わらない
どこにでもいる普通の人間であることがわかり
微かな希望を抱いていた人々は皆ため息を漏らした